長襦袢(ながじゅばん)の種類と違い

長襦袢(ながじゅばん)は着物を着る時のベースとなるもので、着物を着る時には必ず必要になります。着物を着る時には先ず、着物用の肌着を着ます。その次に着る物がこの長襦袢です。そしてその上に着物を着ます。

写真①の首元をご覧ください。首元に白い衿があって、次に黒い衿があって、その次に着物の衿元が有りますよね。この白い衿部分は長襦袢に付いている衿なのです！

また、写真②の首後ろをご覧ください。長襦袢の衿には衿芯(えりしん)と言って少し硬めの細長い芯を入れていますので、後ろを綺麗に抜く(下げる)事が出来ます。

ですので、長襦袢が必ず必要になるという事ですね。

長襦袢＝中に着るもの　という事から…

• 1回だけなので長襦袢なしで大丈夫
• 他の物で代用できない？
• 絶対必要なの？

等のご質問が多いですが、1回しか着ないとしても、長襦袢にも着物を着る為の大きな役割が有りますので、なくては着物を着る事は出来ません。必ずご準備を！また、最近では既製品もございますがお持ちの着物とサイズを合わせる為には反物(たんもの＝未仕立て状態)からフルオーダーでのお仕立てがオススメです。ただし、仕立期間が必要ですので余裕を持ってご検討ください。

絹(きぬ)

先ずイメージされる方も多いのではないでしょうか、絹の長襦袢。絹は軽くて柔らかい手触りですので、長襦袢で着用した時にも体にそっと添う様な着心地です。

化学繊維

長襦袢はポリエステル素材の物も有ります。ポリエステルの最大のメリットはお手入れの手軽さですね。ご自宅でもお洗濯が出来ます。また、雨の日のお出掛けには洗える着物と長襦袢があればとても便利です。

麻(あさ)

麻は夏用の生地として使用されています。夏場は汗を掻いて生地が肌にペタッと引っ付いてしまいます。それが更に暑く感じる原因の一つでもあります。麻はその“ペタッ”となりづらいので夏には最適な生地です。

麻は夏向きである様に、振袖に関しては絹かポリエステル(化学繊維)のどちらかの長襦袢になります。

振袖を久しぶりに着ようと思った時や、ママ振プランを検討されて久しぶりに出してみようと思った時、せっかく箪笥の中から探したけどお店へ持って行くと「これは振袖用の長襦袢ではないですよ」と言われた経験をお持ちの方もいらっしゃるかも知れません。また、意外と多いのは「長襦袢が見当たらない」という方。探す時はココだけチェックすれば振袖用かどうか分かります！！

袖の長さ

振袖と同様、振袖用の長襦袢は袖が長いです。振袖以外の通常の着物は袖の長さが49㎝～57㎝です。一方で振袖用の長襦袢になると104㎝～114㎝(袖の長さは身長とのバランスに合わせて仕立てられています)と一目瞭然ですが、畳んだ状態ではお袖の部分は中に織り込まれていますので分かりづらいです。全部広げるのではなくお袖の長さが見えるところまで折目に添って広げ確認すると良いです。

振袖用の長襦袢は振袖と同様、お袖が長いという事をご説明致しましたが、では反対に、それ以外にどんな種類があるのかご紹介致します。

留袖(とめそで)用

留袖用の場合は真っ白の長襦袢になります。地模様(じもよう＝生地の模様)は入っていますが模様にも色が付いたりはしていません。

喪服(もふく)用

こちらも留袖用と同じく真っ白の長襦袢です。喪服と留袖のどちら共お持ちの方は、長襦袢を兼用で1枚にされているケースが多いです。

フォーマル用

留袖を除く、訪問着(ほうもんぎ)等のフォーマル系にはパステル系の淡い色の長襦袢を合わせます。ピンク系やブルー、グリーン、クリーム、パープルなどが一般的です。

オシャレ用

紬(つむぎ)や小紋(こもん)などにはオシャレ用の長襦袢がオススメです。フォーマル用の長襦袢を兼用で使われる方もいらっしゃいますが、オシャレ用の長襦袢はフォーマル用の長襦袢と反対に、エンジやカラシ色など濃い色であったり、花柄、動物柄、幾何学模様など、オシャレな柄が入っていたり…ワンランク上のカジュアルコーデを楽しめますのでオススメです！メインは着物で、長襦袢はお袖の振り(お袖の手首側ではなく脇側です)から少し見える程度なのですが、ここまでこだわって着る事に楽しみが有りますよ♪

長襦袢(ながじゅばん)ととても良く似た言葉で、お問合せやご質問が多いワードがこの肌襦袢(はだじゅばん)と半襦袢(はんじゅばん)です。この2つはそれぞれ違いますし、長襦袢とも、また違います。

肌襦袢(はだじゅばん)

和装用の肌着の事です。ガーゼやキュプラなどの素材で作られた、長襦袢の下に着る物です。上下別々のタイプは肌着+裾除け(すそよけ)が必要です。また、肌着と裾除けが一体になったワンピースタイプも有ります。

半襦袢(はんじゅばん)

半襦袢とは、長襦袢の役割でもある衿や袖が付いていて、且つ、肌着(下着)の役割を兼ね備えたものです。肌着に衿と袖が付いているとイメージして頂くと分かりやすいかと思います。通常は、肌着→長襦袢→着物の順に着るのですが、この半襦袢を使えば、半襦袢→着物で着る事が出来ます。また、半襦袢の場合は多くが、二部式襦袢(にぶしきじゅばん)と言い、下も長襦袢と肌着を兼ね備えた裾除け(巻きスカートのようなもの)がセットになっています。通常の長襦袢に比べて、簡略化した着方になります。

先ほどご紹介した様に、夏物の生地なども有りますが、仕立の違いも有ります。

袷(あわせ)仕立

裏地が付いていますので、袷着物の時期にはなりますが、最近は気温が高くなっているので、袷の長襦袢の活用シーンは少なくなってきている様です。

単衣(ひとえ)仕立

単衣は袷と反対に裏地が付いていません。単衣着物の時期、5月、6月、9月に適していますが、最近は4月や10月なども場合により単衣着物を着られる事も多くなっていますので、よく着物を着られる方は1枚持っておくと良いかも知れません。

袖無双(そでむそう)仕立

身頃(みごろ＝胴部分)は単衣で袖は袷になっています。袷の長襦袢を作られる場合、最近は殆どがこの袖無双になってきている様です。

夏用襦袢

夏用の場合は生地自体が違ってきます。先ほどご紹介した麻(あさ)の他に、絽(ろ)や紗(しゃ)など透け感のある生地になります。7月、8月の夏着物の時期に着る長襦袢ですので、裏地の無い単衣仕立になります。

最近では6月や9月など、単衣着物の時期に暑いので夏用の長襦袢を着られる方も多くなっています。単衣着物に夏襦袢の時は、必ず半衿を夏用から袷用に付け替えましょう。また、お茶席などでは、この様な気温にあわせた着方は不向きになりますので、TPOに合わせて着用する様にしましょう。

婚礼や入卒などで、久しぶりに着物を着よう！と思った時に多いご質問が、長襦袢に付いている半衿(はんえり)です。久しぶりに開けて見ると「半衿が汚れていた・シミが出ている」とご心配になって来られる方、「半衿が汚れてはいないけど全体に黄ばんでいる気がする…」とご相談にお立ち寄り頂く方もいらっしゃいます。

滅多に着ないので出来ればそのまま使いたいけど…と思われる方も多いと思うのですが、シミが出ていたり、黄色くなっている場合は交換しましょう。半衿はお手頃な価格で購入が出来ます。全体に黄色っぽくなっている場合は、時間が経ち、絹の色が出てきているケースが多いです。シミではなくても新しいものと比べると色の違いは一目瞭然。変えるとご心配なく当日を迎えられます。